専門医のコラム − 心臓血管外科 嶌 田 泰 之

下肢静脈瘤;日帰り手術/一泊二日短期入院の手術 (前のページ)
ペースメーカー手術を受けられる患者様へ:日帰りまたは一泊二日の短期入院 (このページ)

ペースメーカー手術を受けられる患者様へ:日帰りまたは一泊二日の短期入院

 1)ペースメーカーが必要な病気

 心臓は電気信号が心臓の筋肉に伝わることで適切な脈拍数を維持します。電気信号の司令塔が働かず、電気信号を出せない病気を洞不全症候群、電気が伝わる刺激伝導系という心臓の中の電線が途中で切れてしまう病気を房室ブロックといいます。どちらも脈拍が遅くなり、気を失ったり、脳梗塞のため亡くなる方もおられます。大事に至る前に、ペースメーカーという機械を体内に埋め込む手術が必要です。

 2)ペースメーカーとは?


 
電気信号を発生させるペースメーカー本体(正式にはジェネレーターといいます)と電気を心臓まで伝えるリードからなります。ジェネレーターは500円硬貨より少し大きめです。手術は、まず、レントゲンで位置を確認しながらリードを静脈から心臓に留置します。リードの先端から電気が流れますので、リード先端を適切な位置に留置します。リードにジェネレーターを接続すると正常な脈拍数にもどります。通常、鎖骨の下の皮下にジェネレーターを挿入し、皮膚を縫って手術は終了です。局所麻酔で、通常一時間位で終了します。ペースメーカーはジェネレーターの中の電池で電気信号を発生させます。電池は5、6年で消耗しますので、ジェネレーター交換が5、6年に一度必要になります。

 3)合併症
 新しくペースメーカーを植え込む手術、ジェネレーター交換手術、いずれも合併症があります。一番やっかいな合併症はジェネレーターの感染です。

皮下脂肪が少なくやせておられる方は注意が必要です。皮膚の血行障害がジェネレーター植え込み部におこり、皮膚の一部がやぶれ、ばい菌が侵入します。治療のタイミングが遅れますとリードを伝ってばい菌が心臓にまで入り込みます。

リードの断線も厄介な合併症です。完全に断線してしまいますと、電気信号が伝わらず、心臓が動かなくなりますので、非常に危険です。定期検診で早期発見が可能ですので、半年に一度は異常がなくてもペースメーカークリニックを受診されることをお勧めします。

いずれの合併症も新しいリードも含めてペースメーカーの植え替えが必要となります。手遅れになると、直接心臓の中を手術しなければならないこともあります(文献1, 2)。


 4)当院のペースメーカー手術

 当院ペースメーカー手術の特徴は、合併症の予防とペースメーカー寿命の長持ちを実現するため、様々な工夫をしています(文献3)。工夫の結果として手術当日の御退院が可能になりました。リードの断線を防ぐため、カットダウン法と呼ばれ、直接静脈の枝からリードをいれる方法を採用しています。大多数の施設では穿刺法といい、鎖骨下静脈に太い針をさし、ガイドワイヤーを針からいれて、リードを挿入する方法を採用しています。穿刺法は手軽ですが、リードが鎖骨と肋骨にはさまれ、力がリードに加わり断線の原因になります。カットダウン法は、本来、静脈がとおる道にリードが通りますから、あまりリードに負担がかかりません。出血、気胸、血胸といった穿刺法の合併症もさけられます。ジェネレーターの植え込み場所も当院独自の工夫をしています。大胸筋という胸の筋肉の下にジェネレーターを入れます。血行が良く、ジェネレーターの上は筋肉と皮膚で覆われますので、皮膚の圧迫壊死は今までおきていません。また、やせた方でも、筋肉の下にジェネレーターがありますので、従来の皮下ポケットに比べますと、皮膚の盛り上りがなく、美容上も優れています。

 新規ペースメーカー植え込み、ジェネレーター交換も日帰り手術が可能です。これまで250名以上の新規植え込み手術で、術当日のトラブルは皆無です。手術終了直後から、原則としてベッド上安静などの安静制限は一切ありません。キズの痛みが心配な方は御入院いただきます。手術翌日朝、主治医による傷のチェックが終了しますと御退院可能です。シャワーは手術当日から、入浴は翌日から可能です。御帰宅の御都合上、2泊、3泊入院の方もおられます。日帰り手術、短期入院、いずれも御希望にそわせて頂きますのでお気軽に御相談下さい。御退院後は、1、2週間後の木曜日午後のペースメーカークリニックにお越しいただき、ペースメーカーの点検が終了しますと、次回から、半年に一度のペースメーカークリニックでの検診になります。最新型ペースメーカーを厳選していますので、電池寿命は10年以上期待できる方々がほとんどです。

大胸筋下植え込み法


手術直後の傷。術後、
痛みは個人差がありますが、鎮痛剤
の内服で対処可能です。術直後より、
歩行が可能です。水分は術直後から可能です。
食事も術当日夕食からとっていただけます。
病棟内歩行は帰室直後から可能です。




 

 

10日後のペースメーカー外来。
電池寿命をのばすため、一番大きなジェネレーターを使用していますが、傷はきれいに治り、ジェネレーターを植え込んだ場所はちょっと見ただけではわかりません。
入浴は手術翌日から可能です。


 


手術日、入退院日は柔軟に対応していますので、お気軽に御相談下さい。

参考文献

1. Shimada Y, Yaku H, Kawata M, et al. An operative case of inferior vena cava stenosis due to fibrosis around permanent pacemaker leads. Pacing Clin Electrophysiol 2002;25(2):223-5.

2. Shimada Y, Kwata M, Iwasaki Y, Yaku H, Kitamura N. A novel technique for removal of permanent pacemaker leads: Report of four cases. The Japanese Thoracic and Cardiovascular Surgery 2004;52:75-7.

3. Shimada Y, Matsukawa M, Yamamoto F.Subpectoral technique of pacemaker implantation; Reduction of cost and hospital stay. Journal of Rural Medicine 2008; 3: 1.



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