学会長挨拶

JA秋田厚生連 由利組合総合病院 院長

第64回日本農村医学会学術総会を平成27年10月22日(木)、23日(金)の両日、秋田市で開催させていただくことになりました。秋田県での開催は11年ぶりで6度目となりますが、歴史と伝統ある本学術総会の学会長にご指名いただき、理事長はじめ学会役員ならびに会員各位に心から感謝申し上げますとともに、身に余る光栄なことと身が引き締まる思いでございます。

日本農村医学会は平成24年に創立60周年を迎えましたが、これまで日本の農村に寄り添いながら農民の生活と健康を支援し、農村医学の理論と実践の体系化と発展に向けて真摯に努力を重ねて参りました。一方、わが国は、高度経済成長期を経て農村社会が著しく変貌し、中山間地域を除いて都市と農村の生活格差がほぼ消失して、健康や疾病構造の面で農村特性が希薄となり、ますます都市化の傾向を強めております。こうした日本農村医学会の特徴の一つに、全国110の施設で展開しております厚生連病院の地域医療活動がございますが、現在、この地域社会で最も問題となっているのは急速に進む過疎化や人口の高齢化であり、これに対応するため「病院中心の医療」から介護・福祉と連携する「地域完結型医療」への転換が強く求められているところでございます。

そこで本学術総会のメインテーマを「少子高齢社会と地域医療~秋田県の挑戦~」とさせていただきました。秋田県は、少子高齢化と人口減少が全国で最も速いペースで進行しております。平成22年の国勢調査結果によりますと、秋田県の高齢化率は29.5%で、平成27年の今年は33.1%に上昇すると予測されております。実に県民の3人に1人が65歳以上の高齢者になるわけでございます。現在、全国で同様に進行しているこのような人口構造の変化は、疾病構造の変化をもたらし、やがては医療におけるパラダイムシフトが求められ、その結果、医療需要の変化につながってまいります。医療需要が変化すれば、需要に合った医療提供体制の整備が必ずや必要になってくるものと思われます。高齢社会における医療のパラダイムシフトとは、「治す医療」から「治し支える医療」への転換を意味しています。「高齢社会のフロントランナーである秋田県」の取り組みが、これからのわが国の医療のあり方に大きく影響を与えるものとも考えられるわけでございます。

本学会の特別講演として、秋田大学学長の澤田賢一先生に「地域医療再生の途」と題して、医師不足の深刻な秋田県において、秋田大学からの提言の形でお話していただきます。また、東京農工大学特別栄誉教授で秋田県由利本荘市ご出身の遠藤章先生には、世界初のスタチンの発見と開発をめぐる苦難の歴史についてご講演いただきます。教育講演としては後藤田卓志東京医大准教授に「秋田県由利本荘市との出会いと地域における胃がん研究」と題して、胃がん多発地域である秋田県由利本荘地域において現在進行中の、ピロリ菌感染減少時代に対応した新たな胃がん検診システムの構築に関する臨床研究についてお話いただきます。また、秋田大学医学教育学講座の長谷川仁志教授には、「日本の国情にあった理想的医師・医療者育成教育の新展開」と題して、地域医療の担い手としての医師の養成をめぐる医学教育の現状などについてお話いただきます。市民公開講座は、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞を受賞された作家の南木佳士氏に、「薬石としての本たち」と題してご講演いただきます。その他、一般演題、シンポジウム(2題)、ワークショップ(5題)、臨床研修医セッション、ランチョンセミナー(12題)、器械展示等で構成させていただきました。

秋田には多くの観光名所がございます。青森・秋田県境の紅葉の見事な「十和田湖」、平成5年に世界遺産に指定された「白神山地」、世界一水深の深い「田沢湖」、秋田・山形県境の秀峰「鳥海山」など、四季折々で美しい景観を楽しませてくれます。また秋田といえば、米どころ、酒どころでございます。「きりたんぽ」に代表される美味しい郷土料理の数々も、きっと皆さまにご堪能いただけるものと確信しております。全国からお一人でも多くの会員の皆さまにご参加いただき、実りある学術総会となりますよう心からお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。